議会報告

[議会報告]平成15年6月定例会 – 電力の安定供給に関する意見書への反対討論

平成15年 6月定例会(第2回)
町田市議会会議録第16号
6月30日(月曜日)

◆3番(新井克尚)
市民派クラブの一員として、議員提出議案第29号 電力の安定供給に関する意見書に反対の立場で討論をいたします。
その理由、電力の安定供給という部分に関しては方向性は同じですが、「この問題を引き起こした最大の原因は、東京電力㈱の隠蔽体質にある」という部分と失われた信頼を取り戻すために「国及び政府に対し、東京電力㈱に対する指導・監督の徹底を図り」という部分に賛同しかねるためであります。本当に改善すべきは国及び政府であり、一企業ではないという立場にあるからです。
今現在の日本の発展を顧みると、電力の安定供給は各家庭の便利な生活以外に経済の中枢である企業活動を支えてきたことは明白であり、電力の安定供給があったからこそなし得たものであることは周知の事実です。その必要な電力、ピーク時の6,450万キロワット、この電力を確保するには、日本全土を太陽光発電、風力発電で覆っても全く及ばないものであり、現状では原子力発電が安定供給を続ける上で必要不可欠になっております。一刻も早く再稼働しなければ、長期間の停電は避けられない状況です。
そこで、なぜ再稼働する際に国及び政府の指導では根本的な解決にならないのか。改善するべきは東京電力ではなく、国及び政府であるのかをお話をさせていただきます。
今回の損傷隠しの原因となったのは、沸騰水型軽水炉の再循環系配管及びシュラウド――炉心の隔壁のことですが、これらの傷に関して日本の基準では確かに東京電力は報告をしなければなりませんでした。しかし、それは国が現実的にあり得ない基準、稼働後も常に新品の状態を維持しなさいというルールを定めていたからです。原子力発電は稼働した後、何か変化があれば報告しなさいというようなことを監督官庁は決めていたのです。
わかりにくい話かもしれませんので、身近な話をしてみますと、皆さんがもし車を買ったとして、その際に車を走らせて新品の状態から少しでも変化があれば報告しなさいというルールを決められているとしたらいかがでしょうか。少しでも走らせて金属に微量の劣化があれば、そのたびに車をとめて報告をしなさい。オーケーが出るまで何もできない。これでは車を走らせることができるはずもありません。これが日本の原子力発電所を稼働するための基準なんです。
原子炉はほかの機械などと同様、運転をすれば必ず金属などに疲労やひびが入ります。ましてやシュラウドという隔壁、幾らSUS316Lという硬質なステンレスを使っていたとしても、中性子の飛び交っている原子炉の中では、これはステンレスの結晶の中にクロムの原子が入っているんですけれども、そこに中性子が入り込んでひびが入ること、これは原子炉が完成する前からわかっていたことなんです。
では、同じ原子力を使っている諸外国ではどうなのか。フランスやアメリカでは、運転から1年目はこのくらいの傷は大丈夫、5年目はこのくらいで大丈夫、10年目はこのくらいまで大丈夫という基準をつくっています。もしこれを超える大きな損傷や、そして問題があったときには、緊急にそれをとめ、事実を公表して修理をする。こんなあたり前のことを基準として定めているんです。今回の日本の発覚をしたひびなどは、外国の基準であれば原子炉は普通に運転できていたんです。
問題となった箇所のうち、沸騰水型軽水炉の再循環系配管は、原子炉の中の構造材で放射能を帯びた冷却水が流れているものですから、もしその冷却水漏れがあるような傷であれば、これはとめて修理をしなければなりません。しかし、今回のこのひび、国際的な基準に当てはめれば全く問題のないものでした。
また、シュラウド、これは沸騰水型軽水炉において原子炉冷却水が戻ってきたときに、冷たい水――といっても大体140度ぐらいの水なんですけれども、これがいきなり非常にデリケートな原子炉の炉心に当たらないように、その周りを覆っているステンレスの壁です。この壁があるからこそ水が当たらなく、そして原子炉内の水を対流させることができるんです。
このシュラウド、冷たい水や中性水が当たるので、運転していれば当然ひびが入ります。しかし、原子炉の構造材ではありません。ですから、ひびが入っても、車でいえばボンネットに傷がふえた程度のことなんです。では、なぜ日本が新品同様というあり得ない基準を定めたのか。行政の無謬性という言葉があります。行政は絶対に誤りがないという前提があって、役所がつくった法律やルールは、すべてこの無謬性に基づいているのです。要するに、原子炉は絶対に安全でなければならないという前提があって、だから常に新品の状態を維持する基準を監督官庁は設定します。
しかし、現実的には無理があるから、実際はひびなど逐一報告されたら困るわけです。確かにひび割れがあったのは事実、隠していたのも事実です。報道では、電力会社が損傷を経済産業省に報告していなかったとなっていますが、報告をされたらされたで困るのは役所なんです。国際的な基準に当てはめれば、今回の傷などは原子炉をとめるという段階ではない。しかし、新品同様を求めている役所的には、とめろと言わざるを得ないものとなり、そしてその命令に従い原発がとまれば、電力が安定供給できないこと、これはわかり切っていた、これも事実なんです。
行政に間違いがあってはならないから、監督官庁は電力会社が隠ぺいをした、悪いのは電力会社だと発表しています。報道を見る限り、いかにも役所が取り締まりをしているような格好をしていますが、彼らは調査をしても、何をどう調査していいのか全くわかっていません。だからこそ、世界の例のない稼働をしても新品同様を求める基準をつくり、問題になったときに自分たちのせいではないと言えるだけの体制をつくり、責任逃れをしているのです。
整理をしますと、今回の傷は国際的な基準であれば稼働をしていても何の問題もなかった。ということは、そもそも国が正しい基準を設定していれば、電力会社は何も隠さず、今までどおり原子力発電を稼働し続けられたわけです。要するに、今回の電力不足の不安など起きていなかったことなんです。
ところが、昨年9月26日、日本経済新聞の夕刊によれば、経済産業省原子力安全・保安院は26日、原発トラブル隠しの再発を防止するため、安全上、問題ない傷に対して運転を認める維持基準の新設や自主点検の法制化などを柱とする対策をまとめたとありました。
再発防止策は、まずこれまでの新品同様の品質を求めていた原発の機器類に維持基準を新たに設ける。原発の部品は、長期間使用しているとひび割れなどが生じやすい。米仏などには、安全に問題がなければ、これを容認する維持基準があるが、日本にはない。国も新品同様の基準を守るのは困難と見て弾力的に運用をしてきたが、その裁量行政が今回のトラブルの一因となったとの指摘がある。新制度は劣化の許容値を明示し、支障がない傷なら使い続けられるように変更する。こういった内容で電気事業法や原子炉等規制法の改正案を臨時国会に提出、この維持基準はことしの10月から導入されるものです。
私に言わせれば、何を今さらと。国及び政府は、今さら電力会社に経営がたるんでいると言えた義理ではないんです。それ以外にも、皆様も記憶に残っていると思います。東海村の臨界事故、民間のウラン加工会社ジェイ・シー・オーで核燃料施設で放射能漏れがあった、あの事件のことです。ウラン235の濃縮液を処理する際に、10キロ圏内に30万人が住んでいる場所で町工場並みに核燃料を扱っていたこと自体、これは国の原子力行政の根幹を揺さぶる大失態です。そんな人口密集地でやっているのは世界的にも例がありません。アメリカでは、ニューメキシコ州のロスアラモスやアイダホ州のNRTSの人里離れた軍事目的などの施設でやっています。だから、事故があっても一般人が被害に遭うようなことはありません。この事件でも、ジェイ・シー・オーの作業ミスよりも、そんなことを認可した監督官庁及び原子力安全委員会の責任が問われるべきであると私は考えております。
また、政府は、事故発生のわずか2日間に安全宣言を出し、周辺住民に対する避難勧告も解除しましたが、核燃料が漏れていたとしたら、少なくとも半径300メートル以内の地域ではもっと時間をかけて念入りに汚染の有無を調査するべきなんです。それが日本の原子力行政の現実なんです。2年で役職が変わってしまうような役人に、安定した電力の供給と同時に、国民の安全を守るというための原子力の保安や監督が本当にできるのか。こういった根本的な問題を解決するのが私は先であると考えております。
国が権限を握っていて言うことを聞くしかない一企業を責め立て、一体何になるんでしょうか。本当にやらなければならないのは、国及び政府が誤った基準で電力会社を縛りつけてきたことを認め、このくらいのひびは国際基準に当てはめれば平気なものだったと正しい情報を監督官庁が責任を持って説明できる環境をつくることにあります。
そういった趣旨から、電力の安定供給は必要であるとの方向性は同じではありますが、それを一企業の責任にしているこの意見書には賛同しかねます。本来あるべき姿、国や監督官庁が誤りを認め、説明責任を果たしていくことこそ、今後の日本の電力安定供給に不可欠な要素であるということを再度訴え、電力の安定供給に関する意見書に対する反対討論といたします。

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