議会報告

[議会報告]平成24年3月定例会 – 保健所政令市、公立学校における学力向上策について

[平成24年 3月定例会(第1回)-03月08日-06号]

 

1 保健所政令市について
2 公立学校における学力向上策について

 

◆14番(新井克尚) まちだ新世紀の一員として、通告に基づき一般質問を行います。
まず初めに、保健所政令市についてであります。
この質問は、地元玉川学園にお住まいの市民の方から、保健所政令市というのは何ですかと質問をされたところからスタートしております。確かに政令指定都市とか保健所政令市とか、保健所があったり保健センターがあったり、市民の方にはわかりづらいところもあるのではないかと思います。これをよりわかりやすく伝える質問ができないか、そんな観点から、ほかの皆さんが施政方針について聞くような議会で、あえて重ならないようにこのタイミングでテーマを絞って通告をさせていただきました。
保健所政令市とは何か。一言で言うと、保健所の設置を政令、地域保健法で定める市のことであります。よりよい対人保健サービスを町田市は展開できるようになるわけでありますけれども、それは一体どんなことでしょうか。例えば食の安全や感染症に対する健康危機管理機能の強化を図り、関係機関と連携した迅速な対応が可能となります。これはまさに放射能の問題も含まれると考えております。また、市が実施している母子保健事業などの身近な保健サービスと都保健所が実施している専門的業務を一元的、総合的に実施することにより健康づくりの推進が可能となったわけです。さらに、新たに保健所の企画調整機能を持つことによって、地域の実情に即した保健衛生行政を展開することが可能となりました。
実際に保健所政令市に移行した船橋市では、児童関係の自立支援医療、療育医療や養育医療を母子保健の窓口であった保健センターで、小児慢性特定疾患治療研究事業も母子保健担当部局で統合実施して市民サービスの地域自治とワンストップを図り、未熟児を含めた新生児訪問対策を一まとめにして格差を解消するなど、類似した事業の再編と新たな連携を構築することでサービスの向上をさせることに成功いたしました。
では、果たしてこの保健所政令市はいいことずくめなのでしょうか。メリット、デメリットをやはり明確にしなければなりません。移行した他市の例で見ると、藤沢市や相模原市では、保健医療と福祉の連携による一元的なサービスができるようになったこと、岡山市では、保健所関係で蓄積された企画調整や評価に関するノウハウを、保健関連の健康増進などで直接市民に提供するさまざまなサービスだけでなく、防災などのほかの市町村業務に生かせるようになり、より質的に高度な業務を市民協働のもとでできるようになったそうであります。
しかし、デメリットとしてはやはり財政負担、藤沢、相模原、岡山、八王子など、この財政負担がデメリットとして挙げられると公表しております。
昨年4月に町田市は保健所政令市になり、間もなく1年がたとうとしております。この保健所政令市に関連して聞きたいことは幾つかあったのですが、あえて町田の市民生活の向上に関係した部分のみ質問をいたします。
保健所政令市になり、東京都から権限が移譲されました。これによって町田市の財源負担は先ほどの他市同様ふえたのではないかと思いますが、現状はどうでしょうか。デメリットだけでなく、メリットも確認したいので、市民サービスがどう向上するかもお聞かせいただきたいと思います。
保健所政令市を受けたことによって保健行政がより身近な存在となったと思います。では、その身近な存在を活用するために、市民と課題を共有できる仕組みなど、どのように活用していくかについて、その方向性をお話しいただきたいと思います。
そこで、伺います。
(1)財源負担の現状はどうか、(2)保健所政令市をどう市政に活かすのか、お聞かせください。
次に、公立学校における学力向上策についてであります。
この質問につきましては過去に何度も質問をし続けてきたものであります。公立学校でも学力向上は実現できる。それは、私が市民の方から、うちは塾に通わせるほどの収入がない、公立学校に通っている子どもは、塾に行かせることができなければ、ゆとり教育の中で学力がどんどん差がついてしまうのは仕方がないことなんでしょうか、こんなことを言われたところから、公立学校でも学力向上はできるんじゃないかということでいろいろ調査を行いまして、それをこの本会議場でも提案させていただきました。
もちろん、提案はさせていただいておりますけれども、それと同時に、町田市は町田市の独自の取り組みを行っていらっしゃいまして、その内容も大変すばらしいものもございます。それは間違いのない事実でありますけれども、しかし、それ以外のやり方としてもいろいろあります。実際この本会議場で提案させていただきましたことは数字として学力が向上しているということを明確にし、そしてそれは全国に発信をしている内容であります。
昨年の第1回定例会においてぜひ研修でこの話を直接聞いていただきたいと提案をさせていただきました。その際には、今後の町田市の研修のありよう、講演会のありようの中の選択肢の一つと答弁をいただきましたが、その後どうなりましたでしょうか。町田市で研究されていることはもちろんすばらしいですし、そのまま続けていただきたいですけれども、それプラス、よりよい町田の教育環境をつくるべく、直接こういったお話を聞いていただきたく質問させていただきました。その後の経過をお聞かせください。
以上で壇上よりの質問とさせていただきます。

◎市長(石阪丈一) 新井議員のご質問にお答えをいたします。私からは、項目1の保健所政令市についてにお答えをいたします。
まず1点目の財源負担の現状はどうかでございますが、保健所政令市移行に伴います激変緩和措置として、協定によりまして人件費を含めた全事業費に対して東京都から5年間の財政支援がございます。保健所政令市の経費としては、移行前の試算で、人件費も含めた歳出が6億4,000万円、歳入が1億円、実質的な歳出額は5億4,000万円程度になるというふうにしておりました。2011年度の執行額は最終的にはこれとほぼ同額となる見込みでございます。このうち、東京都の財政支援分を除いた2011年度の市の財源負担は、実質的な歳出額の3分の1に当たる1億8,000万円程度になるという見込みでございます。
なお、保健所政令市に係る経費は地方交付税の基準財政需要額に算入されます。町田市は2011年度、普通交付税の交付団体となっておりまして、保健所政令市に移行したことによりまして約7億3,000万円が基準財政需要額に算定をされております。その結果、それも含めて地方交付税は14億6,000万円となっております。すなわち、東京都の財政支援分を除いた2011年度の町田市の実質財政負担見込み額であります、先ほど申しました1億8,000万を大幅に上回る7億3,000万円が地方交付税基準財政需要額に算入されているということでございます。
次に、2点目の保健所政令市をどう市政に生かすのかというご質問でございます。町田市が保健所政令市となり、東日本大震災に端を発した放射線への対策、あるいは牛肉の生食による食中毒などの市民の生活の安全に関する問題につきましては、主体的かつ迅速に対応することができたと考えております。保健衛生に関する国と東京都から移譲されました権限及び専門的な保健機能を活用し、市民、団体事業者と協働して、町田市基本計画、まちだ未来づくりプランの基本目標の1つであります安心して生活できるまちづくりを進めてまいりたいと考えております。
その他の項目につきましては教育委員会からお答えを申し上げます。

◎教育長(渋谷友克) 私のほうからは、項目番号の2番目、公立学校における学力向上策についての中で、昨年の第1回定例会で私がご答弁申し上げた内容に関してお答えを申し上げたいと思います。
私がご答弁申し上げましたのは、その際新井議員さんからもお話のありました陰山メソッドを主宰していらっしゃる陰山先生に研修会や講演等の講師として来ていただいてはどうかというお話でした。それに対してそれは選択肢の1つだというふうに申し上げました。
その点でございますけれども、現在においても1つの選択肢であるということに変わりはございません。そのことを前提にお答えをしたいと思いますが、学力向上のための研修、あるいは講演会の講師の選定でございますが、まず町田市の現状を踏まえた上で選定をしております。現在の取り組みを基本に考えていくという、ここから出発をしております。
本年度でございますけれども、予算の関係もございまして、実は職員課の研修係のほうの予算を利用いたしまして、2010年度の全国学力・学習状況調査におきまして、中学校では全国第1位、小学校では第2位だった福井県を視察してまいりました。福井市の小中学校を実際お邪魔して調査をさせていただいたわけですけれども、町田市と同様に、食育ですとか幼保、小中の連携でございますとか、それから家庭、地域、学校の連携、こういったものを推進している。生活習慣の改善とともに、学びの連続性に留意した教育を推進している、こういうことなどが行われておりまして、参考になるお話を伺うことができました。
今後、町田市といたしましても、現在進めております小中一貫教育並びに地域連携、こういった現在の取り組みをやはりより充実させていくというところを基本路線とさせていただいて、基礎基本となる知識、あるいは技能、思考判断、表現力等の育成を図って、授業でわかる喜び、できる喜び、これを子どもたちに感じてもらう、自己肯定感を高める研修ですとか研究の充実を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
今後とも町田市の子どもたちに生きる力をバランスよくはぐくむということを念頭に置きながら、授業力の改善、あるいは授業力の向上の取り組みをしていきたいというふうに考えておりますけれども、今後の研修、あるいは講演会等の講師につきましても、そういった視点、自己肯定感の育成といったような視点を考えながら選定をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
以上でございます。

◆14番(新井克尚) それでは、保健所政令市から再質問をさせていただきます。
確かに記憶では、食中毒に対する対策、そして放射性物質について、昨年の震災以降の4月1日から保健所政令市がスタートしたわけでありますけれども、まさに健康福祉常任委員会に当時所属をさせていただいておりまして、委員会の中でまた数々の請願も出てまいりましたし、深い議論もさせていただきました。こういった迅速な対応ができたのは間違いなく保健所政令市に移行したからであろうというふうに思っております。そのあたりについてはまた後ほどお伺いをしたいと思いますが、まず財源負担については、地方交付税算定基準額7億3,000万で町田市の負担が1億8,000万ということは、5億5,000万ぐらいはことしについてはプラスに働くのかなと。これがこのまま続けばいいなというふうに思うんですが、少なくとも今現在財源としては確保されているということは確認をすることができました。
財源負担と保健所政令市をどう市政に生かすのかという説明を市長からいただきましたけれども、それでは、この町田市の保健行政の今後の課題はどうとらえていらっしゃいますでしょうか、そこをお聞かせください。

◎市長(石阪丈一) 課題というご質問でございます。一般的な情勢にはなりますが、まず少子・高齢化の急速な進行ということ、それから世帯規模が年々縮小している。あるいは家族形態が多様化している。さらには国際化の進展、それぞれ一般の状況なんですが、実はこれが保健医療を取り巻く環境として非常に厳しくなっているというふうに認識をしております。その結果、生活習慣病の増加を初めとして、心の健康、それから食の安全、新興感染症の流行、それから環境汚染による健康被害などが深刻な問題となっているというふうに認識をしております。
町田市といたしましては、こうした問題に対してこれまでたびたびご質問をいただいております、がん検診を含む健康診査や普及啓発を中心として取り組んでまいりましたが、今後はさらに生活習慣病予防のための健康づくり、あるいは心の健康づくり施策、そういったものを一層充実させていく。さらに、健康危機管理、そういう体制の確立が今喫緊に求められている課題というふうに考えております。

◆14番(新井克尚) ありがとうございます。心の健康であったり食の安全、新興感染症、がんにつきましては本当に会派といたしましてはこれにプラスをして粒子線治療も含めてご検討いただけるような、そういうことを提案してまいりましたので、それをお含みいただいてのお気遣いの答弁だったのかななんて気がするわけでありますけれども、保健所のほうでもこちらのほうを進めていると、そして生活習慣病も本当に大変な問題であります。
こういったことを解決していく中で、ちょっと健康危機管理体制の確立という言葉がありました。具体的にどういうことなのかということがわかりにくかったので、このあたり、ご説明をいただきたいと思いますが、よろしくお願いいたします。

◎地域保健担当部長(大井洋) 健康危機管理でございますけれども、健康危機管理とは、人の健康に危害が及ぶ可能性のある健康上の喫緊の課題に対して迅速に対応して、これを一番は予防でございますけれども、その予防と、それからもう一つ、発生時に迅速に対応いたしまして被害を最小限に食いとめるということが非常に重要でございます。具体的には、こうしたものを事前に体制を確立しておくために、健康危機管理計画を策定するなど、関係機関、近隣自治体との連携を強化していくということになります。

◆14番(新井克尚) 具体的な説明をありがとうございます。昨年の4月に保健所政令市がスタートいたしまして、ここまで信念を持ってこの保健所政令市を推し進めた石阪市長、自画自賛になってしまいますけれども、そのビジョンを語っていただいたことは、この質問は大変意義深いものであったのかなというふうに考えております。
そして、大井部長、医師免許を持っていらっしゃる方でないとできない役職でありますけれども、部長は保健福祉行政に自分は携わりたいという強い思いを持ってこの町田市の保健行政を担っていただいていると伺っております。心から敬意を表したいと思います。本当にありがとうございます。
自殺についてとか、本当にまだまだ町田も人数がふえているようでありますし、心の健康の問題というのは本当に重要な課題であるというふうに考えております。それ以外にも新型インフルエンザ、今現在本当に猛威を振るっておりまして、一度かかったのに、今度は違う型に感染をしたという方もいろいろとお話を伺っております。こういった新型インフルエンザなどの重篤な感染症もそうですし、昨年まで健康福祉常任委員会に所属をしておりまして、すごく多くの方の思いを伺っていたのが、まさに小さな子どもを持つ保護者の皆様の日々大きな不安要素となっている放射能の問題であろうかと思います。
これについてまたお伺いしますけれども、それ以外にも集団食中毒とか未知なる健康危機とか、こういったものに対する予防とか、発生したときの迅速な対応ができる体制が整ったということをまずは市民の皆様方に広く知っていただきたいという思いでこの質問をさせていただきました。
保健医療を取り巻く情勢の変化、インフルエンザや放射能の話をとってみても、やはり今の保健所政令市ですばらしい成果が出ていると市民の皆さんも実感されるのではないかと思いますけれども、例えば、昨年の4月に保健所政令市になっていなかったと仮定をした場合に、保健所が東京都のままであったと、3月11日に震災があってこの放射能の問題が起きた、そうなった場合には一体どういう対応が想定されたのか。例えば、議会でいえば、委員会で直接やりとりをしたとしても、これは東京都に聞かなければいけませんという状況になってしまっていたのか、そのあたりを最後に確認をさせていただければと思います。

◎市長(石阪丈一) 一番大きな点は、やはりきちっとした識見に基づいた正確な情報が直接議会の皆様、そして市民の皆様に届けられたというのが一番大きな要素でございます。それはもちろんスピードというだけではなくて、そこで、議会でいえばやりとりができるという状況でございます。東京都の保健所長さんが委員会に出るということはまず考えられませんので、そういう意味では非常に大きな役割を果たしていただいたというふうに思いますし、また、ほかの面で言いますと、福祉の行政とか、法律上でいえば福祉事務所のほうの仕事ですが、そういったことと保健所行政とが密接に連絡ができるようになったという意味で非常に大きな効果を生んでいると思います。今から考えれば、保健所政令市に移行していなかったらというのは、考えるとちょっと恐ろしいような気がするくらいに違いがあるのではないかなというふうに思っております。

◆14番(新井克尚) 本当にタイミングというか、このタイミングで保健所政令市に移行していた、市長の先見性というか、すばらしい、運のよさというか、本当にそういった強運の持ち主でいらっしゃるなとは思うんですけれども、こういった意味では、市民の一番の不安を直接市政に届けることができる体制を昨年の4月からできたということは本当にすばらしいことだなと。自分も健康福祉常任委員会の委員として皆さんの声を聞く中で、この声がもし東京都に届けなければいけないとなると、職員に、では、東京都に要請をしてくださいで終わってしまったかもしれませんし、それを身近な自分たちの役所を担当してくれて、声を聞いてくれて、そして迅速に対応してくれる、それをまさに実感した1年でありました。
今後も保健行政の問題というのは多々発生するということが予想されます。こういう問題は時になかなか前に進まない部分もあるかもしれませんが、それでも市民サービスに影響が出ないように一層の取り組みを引き続きお願いしたいところであります。
それも含めまして、最後に、市長の決意というか、信念というか、いま一度お考えをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

◎市長(石阪丈一) 保健所機能については、私が港北区の区長であったときには既に保健所長さんが、言い方は妙ですが、部下としておりました。そういう意味では医療行政についてもそれなりの示唆をいただくことが当時からできておりましたし、もちろん一般の健康保健についてもできておりました。とりわけ精神医療、あるいは精神保健の分野でもかなり、いわば保健所のケースワーカーさんと直接私は話をしながらいろんなことを進めてきておりました。こちらに市長になって、その部分は東京都の職員ですよと言われると、ちょっとやっぱりそうなのかなというふうに実感をしております。
それは1つの例なんですが、やはり地域の保健医療を支える人が、いわゆる福祉部門を含めてほかの行政、教育部門も含めて一緒に働いていただけるということはすばらしい相乗効果を生んでいるわけでありまして、まだ1年ですが、これからもさらに地域の保健医療、つまり市民の皆さんの健康を守るためにさらに効果が出てくるというふうに私は期待をしていると同時に、そのために努力をしてまいりたいというふうに考えております。

◆14番(新井克尚) ありがとうございました。横浜でお仕事をされていたときから、やはりこの保健所政令市というか、保健所長が自分の部下としていることに大変行政の効率性というか、すばらしい効果があるということをご存じだった人だからこそ、やはりこのタイミングでここまで進めてこれたのかなというふうに思いました。これからも引き続き町田のよりよい保健行政のためにご尽力いただければと思っております。
以上で保健所政令市についての質問を終えます。
続きまして、公立学校における学力向上策についてであります。
選択肢の1つは変わっていないというお話でございました。もちろん町田市で重点を置いていることについての研修をされるのも当然でございますし、そこから外れてというふうに私は思ってはおりませんので、もちろん町田市で今進めていることも含めてすばらしいお話をしていただけるのは間違いないと。なぜ陰山さん自身が中央教育審議会の委員になられたかとか、今現在大阪で教育委員を務められているかという経緯も含めますと、やはりそれだけ実績を残されて、結果を残されて、それだけ教育理論として確立をされているからであると思いますし、私も実際陰山さんの講演会、お話を含めて十数回直接聞きに行っております。たまたま高崎で陰山さんの講演を聞いているときはらん丈さんが落語をされていたりとか、高崎で偶然そんな出会いもあったりとかして、それも含めて本当に説得力がありますし、パワーポイントなども使われてデータもしっかりと示されて、すばらしいお話でしたので、町田の教育関係者の方にぜひこれを聞いていただきたいという思いで質問をさせていただきました。
ただ、費用の話がたしか出てまいりましたので、大阪で教育委員を務められていらっしゃいますから、恐らく新幹線の往復だけでも2万円は超えてしまうというような状況になりますと、やはり近場で講師を探さないと予算的には厳しいのかななんていうふうに思うんですが、そのあたり、現状、検討された経過も含めてお聞かせをいただければと思います。

◎教育長(渋谷友克) その後の検討の経過についてというご質問でございます。お話をいただいた以降、お話の陰山先生に関するさまざまな情報収集はいたしました。例えば過去の講演でございますとか陰山先生が代表を務めておられます徹底反復研究会、この団体の情報とか、さまざま収集したところですけれども、先ほど金額のお話が出ました。
具体的にその陰山先生のオフィシャルウエブサイトに掲載されている陰山ラボというところがあるんですが、こちらに連絡をとってみました。その際のお話なんですが、陰山先生の講師料は90分30万円が基本であるということでした。それにプラスして旅費と宿泊料ということでございましたので。
ただ、もう1つお話がありまして、市町村単位、市並びにその町、村が全体で陰山メソッドを取り入れるということであれば相談に乗りますよという、そんなお話もございまして、私ども町田市教育委員会として研修予算は確かに持っているんですが、その金額だけで例えば指導課が主催する研修の全体予算を超えてしまう。通常は2万円で交通費込みという形で運用しておりますので、そうすると、やはり相当たくさんの先生方に来ていただけるということもありまして、そこにためらいは当然生じてしまうということはあったと思います。
それと、やはり実際陰山メソッドを展開している事例というのも当然当たってみなくてはいけないというふうに思いますので、新井議員さんからお話のあった山陽小野田市の教育委員会のほうにもお問い合わせはさせていただきました。教育委員会のお話ですと、いわゆる生活アンケートについては継続して平成18年以降も続けているけれども、いわゆる生活と知能指数や学力、これと相関関係を把握するような調査についてはそれ以降は行っていないというお話でした。
また、100ます計算ですけれども、これについては全市的に行っているわけではないというお話でした。モジュールの中でその100ます計算を行っている学校もあるということでございました。国語科の基礎基本の内容については、全国あるいは県の平均に比較すると定着が図られているのではないかというお話もあったようです。
ただ、いずれにしても、実際そういう前向きな取り組みをしている山陽小野田市において100ます計算のその後の帰趨がどうなったのかということも含めて、これは私どもとしてさらに把握、検討は進めていく必要があるだろうというふうには思っております。
以上でございます。

◆14番(新井克尚) 私が2007年にちょっと陰山先生を町田に呼んで講演会を開いたことが――私が主催者ではないんですけれども、担当の人間としてやったときは往復の交通費だけで来ていただいたという時代でございまして、あのときは非常に、これからいろいろ本も出されて、そのときも出されていましたけれども、これからまたいろんなところで講演をしていくというような状況で、その後いろんな出版社もついたりとかして、もしかしたら講演料も高くなってしまわれたのかなという気がしなくもありません。さすがに90分30万は厳しいなと。
陰山先生じゃない方でももちろんいいはいいんですけれども、例えば小河勝先生とか、大阪府の教育委員を陰山さんと一緒に務められていて、その陰山先生が100ます計算を知ったきっかけとなった先生であるんですけれども、その先生も直接私は講演を聞かせていただいて、やはり自分たちが教師としてやってきた中で一体子どもたちに何が起きたのか、その原因は何なのか、それを解消することによって子どもたちは必ず伸びるというところまで持っていった。その方がやっぱりパワーポイントを非常にうまく使われて説得力のあるお話をされていました。
その一端をちょっとお話しさせていただきますと、1977年に中学校の教師をされていらっしゃいました。非常に荒れた学校であったのは間違いないと。ただ、その1977年の中学校の新入生の様子が今までと全く違ったそうであります。今までは何人かはちゃんと勉強するような子どもたちもいたけれども、その年からは総崩れであったと。まさに荒れる中学校の時代が到来したと言われるときだそうであります。窓ガラスは割られる、校舎は破壊される、やるなということはとにかくやる。道徳を幾ら説いても全くの無意味であったと。その破壊する行為を抜けようとする子どもにはリンチを加える、そういう荒れた学校の中で問題が一体なぜ起きたのか、どんなに校則を厳しくしても、子どもたちを呼んでそういうことはやっちゃいけないんだと言っても全く聞かない。
この原因は一体どこにあるのか、その病んだ心理がどこから来るのかというのを一生懸命調べる中で、エーリッヒ・フロムという方が書いた「悪の意識」――ちょっと翻訳によっては違うタイトルもあるようなんですけれども――という本を読んだときにふと気がついたそうであります。それはこの言葉からであります。無力感の中で人間は永遠に生き続けられない、そしてその後破壊を求め始めるという言葉があったそうであります。まさにこれじゃないかと。
何があったのかと調べてみると、1968年に学習指導要領が改訂されました。それは1971年にスタートいたします。1971年にスタートした時点で小学校1年生の子どもは新しい学習指導要領でスタートするわけですね。それまでの教育のスピードが3倍に変わったと、九九も2年生ぐらいにがっと、しかも詰め込まれてとか、そういう学習指導要領であったわけですけれども、その子どもたちが小学校6年を卒業して1977年に中学校に入ってきて、その子どもたちは何を道徳を説いても一切聞かなかったと。まさに詰め込み教育の中で自分はどんなに勉強してもできないという無力感の中で6年間を過ごした子どもたちが今この学校で非常につらい思いをしている。だったらできることから始めようといってスタートしたのがたまたま100ます計算だったそうであります。
子どもたちはこれならできると喜んで席に座って、できたことに対して喜びの表情を見せて、もしかしたらこれがこの子どもたちを救うことができるきっかけになるんじゃないかというところから、100ます計算ばかりがその後も注目をされて、陰山先生イコール100ます計算みたいになってしまっていますけれども、大もとは生活習慣の改善と基礎基本の徹底反復、その基礎基本も、自分はやればできるという自己肯定感を植えつけるためのツールであって、別に何でもいいんです。音読でもいいし、都道府県の県庁所在地と、都道府県の形を見てそれがどこなのかみたいな、そんなのも、自分ができるということを気づいて繰り返すことによって、自分はやれば成長できるんだと思わせることが一番大事だと、これがまさに陰山メソッドの根底にある部分なんですね。それをやっぱりパワーポイントを使っていろいろ説明されると、そのとおりだなと非常に納得できるんですよ。
これは僕も何回も聞いてその話をしているだけであって、僕はそんなに説得力はないかもしれませんけれども、陰山先生いわく、子どもがはまる瞬間があるというんですね。みんな普通に勉強しますよ。学校に来ていますから。ところが、自分はやればできると自己肯定感を物すごく持った子どもたちは、先生、これがわからないんだけれども、これはどうすればいいの、とにかく休み時間も勉強のことを聞きに来るようになると。物すごい変化をするらしいんですね。そのはまる瞬間という子どもたちを何人も何人も見てきて、やっぱりこの指導法は正しいんだというところから、ぜひこれも町田の子どもたちにみんなにそのはまる瞬間を持ってほしいという思いで質問をさせていただいたわけであります。
陰山先生はちょっと高いというお話でしたので、陰山先生に限らず、ほかの方も含めてそういったものを研修に取り入れていただきたいということを教育委員会にお願いすると同時に、研修の予算もなかなか厳しいようでありますので、一応市長のほうを向いて言いますけれども、答弁を求めると余りいい答えは返ってきそうにありませんので、これについては要望でとどめさせていただきまして、私の一般質問を――その前に何か答弁がありますか。では、答弁をいただいてから終えようかと思います。

◎教育長(渋谷友克) 貴重なお話をありがとうございました。今のお話の中にも出てまいりましたけれども、基礎基本の重要性ですとか生活習慣の確立、このことですとか、先ほど来お話に出ている自己肯定感といったようなものについては、私ども町田市が進めている教育のあり方と重複する部分は相当程度あるだろうと。それは新井議員さんもお認めになっているとおりなんですけれども、それぞれの町田市内の学校の実践の中にそういったものがやはりいろいろ出てまいります。
実は私も教育長になって2年ほどたちます。その間、市内の学校をたくさん回りました。いろいろな研究発表も聞いてまいりました。そういう研究発表を見ていると、やはり町田の学校は頑張っているなという思いを非常に強くいたします。
残念なのは、その場に議員さんの姿が余り見られなかったという、それに気がつきまして、例外はもちろんございます。来年度からはちょっとそういう研究発表などが行われる際には、それぞれの議員さん方にもご案内を差し上げようかなというふうにちょっと思っております。そういった町田市のすぐれた教育の側面というものもごらんになっていただいて応援をしていただければというふうに思っております。
新井議員さんがおっしゃっておられるような自己肯定感、基礎基本の習得、生活習慣の確立、これについては今後も進めてまいる、力を入れてまいるということについては変わるところはございません。
先ほど小河先生についてのお話もございました。ちょっと小河先生については、情報としては存じ上げていたんですが、具体的に費用がどのくらいかかるとか、そういうところまでまだ調べていないものですから、これは早速対応してみたいと思います。そんなことも含めて、今後もその辺の選択肢を広げながら町田の教育の充実に努めてまいりたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

◆14番(新井克尚) ありがとうございます。小河先生に関しましては、昨年、公益社団法人日本青年会議所、徳溢れる心醸成会議というところが研修に呼んでおりまして、そのときの講師費用というのを内緒で聞いてまいりました。ちょっと公表しないでくれということですので、後で内緒でお伝えをしてまいりたいと思います。
その陰山先生、小河先生等がいろいろやられていることで一番ポイントなのは、僕は保護者を巻き込むことだと、保護者の方にどう納得していただくかだと思っております。山陽小野田市が1回データをとったけれども、それ以降とっていないというのは、恐らくその考え方がちゃんと家庭にも浸透したからだと、過去に生活習慣のアンケートが来たというを母さんがいて、適当に、何だかよくわからないから丸をつけて返しましたというお話をここの場でもさせていただきました。なぜそのアンケートをとるのかというところがやはり浸透していないと、ここは家庭の協力はなかなか得づらい。その方にはちゃんと説明をしました。なぜかというと、こういうことがあってですね、それでアンケートが来たんですねと納得していただいたところもあるんですけれども、やはり学校現場がどんなに頑張ってもだめだということは陰山先生も小河先生もお話をされています。このままだと教師がつぶれてしまう、一生懸命学校現場は頑張っているのにという、その言葉の裏には、やはり家庭の協力をどう学校が得ていくような努力をしていくか、そのノウハウは確実にお持ちだと思います。そこはなかなかプライバシーの侵害だとかいろんな話も出てくるようなこともありますし、IQを調べるというのはどういうことだということで反発が出てくることもあるかもしれません。でも、それを信念を持って調査をした結果、これだけすばらしい結果が出た、だから子どもたちのためになるんです、子どもたちも成長して、親御さんたちも喜んでくれて、教師も授業をさらに進めることができて、より先進的なことを子どもたちに教えることができる、すばらしい循環ができ上がっているといういい例なので、これも町田の学校の中のすばらしい取り組みを町田の市内、もしくはそれよりも外に広げることもやりつつ、このすばらしい取り組みをぜひ町田に取り込んでいただいて、すべてをひっくるめてすばらしい町田の教育になることを私は心から願っております。もちろん今の進めていることも全力で応援をさせていただきたいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

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